猟友会という組織

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鳥類や哺乳類の捕獲の際に「猟友会」という組織の名前がよく出てきます。

この組織の実態や抱える問題について調査した内容をご紹介します。

① 猟友会の成り立ちと組織

猟友会はもともと、毛皮や肉を安定的に供給するために国の主導で1929年に創設され、戦後も同じ目的で組織が継続されました。

猟友会は現在一般社団法人なのですが、創設時の名残で市町村の行政職員が事務等の部分を肩代わりしているという問題を持つ地域も存在します。

組織の構造としては、大日本猟友会の下に都道府県猟友会、その下に市町村支部が存在するツリー状の構造になっています。

各支部の長は構成員の選挙によって選ばれ、大日本猟友会の長は都道府県猟友会長の選挙によって選ばれます。

現在の大日本猟友会会長は元衆議院議員の佐々木洋平氏です。

大日本猟友会及び都道府県猟友会は一般社団法人の形態をとっていますが、その下の市町村支部は法人格を持っていない(形上は都道府県猟友会の一部になる)場合が多くあります。

一般社団法人は非営利なのですが、公益的(公益法人)ではありません。

非営利とは、株式会社のような「利益が出た場合に内部に還元する」ということをしないという意味です。

それ以外の部分では、一般社団法人は普通の会社と同じです。

② 思惑と行動原理

現在、猟友会は趣味で狩猟を行うハンターが集まった組織となっています。

大型哺乳類に関する歴史(リンク先②)でも書きましたが、狩猟によって得た肉や毛皮の販売によって生計を立てている人は現代ではほぼいません

魚で言えば、漁師が消えて釣り人が残ったような状況です。

ハンターは、思惑や行動原理が釣り人とよく似ています。

猟友会が組織として共有している意識は「獲物がたくさん獲りたい」「楽しく獲りたい」というものです。

農林業等の被害があるため大きな声では言いませんが、ジビエの構造(リンク先④)でも書いたとおり、基本的にはシカやイノシシのような獲物は多いほうが良いというのがハンターの考え方です。

魚が多くいるほど釣り人が喜ぶのと同じです。

加えてハンターは、ハンターの数が増えることを望みません

ハンターが増えれば獲物が減り、自分が狩猟に入っている地域の獲物が獲り荒らされてしまうからです。

このためハンターが多数いた頃から、トラブルを避ける目的で「ナワバリ」と呼ばれる仕組みが形成されてきました。

「この地域は自分たちが入るから、よそ者は来るな。そのかわり自分たちもよそへは行かない。」という不文律ですが、これがいまだに残っており、様々な問題を起こしています。

ナワバリという言葉が示す通り、狩猟者の多くは非常に排他的で、捕獲者が増えるような仕組みの改善に抵抗します。

上下関係が厳しい支部も多く、50~60代の方が市町村猟友会に入った場合も、猟友会の内部はそれ以上の歳の人ばかりですので、下っ端の役回りをさせられて実質的な捕獲ができないというような地域も多いようです。

③ 組織運営上のリスク

猟友会は構成員の減少と高齢化が急速に進んでいます。

しかし市町村支部レベルでは「新人やよそ者が入ってきてイザコザが起こるより、今のままが良い」という意見が多勢を占めているようです。

自分たちが引退するまで身内で楽しくやっていたい、ということです。

古くから各支部の間にはナワバリ争いが存在しており、隣り合った市町村支部同士は基本的に仲が悪いため、連携や共同での対策もほとんど打てません。

大日本猟友会や都道府県猟友会は市町村支部の会費によって運営しているので、構成員の減少は致命的なのですが、市町村支部レベルでは他人事なのです。

この大日本や都道府県の猟友会に対する会費の支払いに腹を立てた市町村支部が猟友会を離脱する事例も多く聞かれるため、大日本や都道府県猟友会からはあまり強い指示は出せません。

実際、猟友会を離れても狩猟や有害鳥獣捕獲のような捕獲には参加することができ、猟友会の外の団体も増えてきています。

我々Balancerもその一つです。

そもそも大日本猟友会や都道府県猟友会は市町村支部の選挙で選ばれた人で構成されていますから、内部に不満がたまれば次期に選ばれることはありません。

現在は猟友会を維持存続しようと様々な名目で多くの公的資金や制度が使われていますが(一民間団体ですから当然それはそれで問題です)、このように組織内の自浄作用が全く存在しないため、ほとんど効果がありません。

加えて、構成員が捕獲に関連した事故や報奨金の詐取などの事件を起こした場合でもトップの責任が問われることがほとんどありません

これは普通の組織から見ればかなり異常なのですが、後述する「独占」の結果このような状態になってしまっています。

④ 組織内の事業に関する問題

大日本猟友会は以下の三つの事業活動を行っています。

1.野生鳥獣の保護増殖事業
2.狩猟事故・違反防止対策事業
3.狩猟共済事業

柱であるこれらの事業にも、問題があります。

 

「1.野生動物の保護増殖事業」は主にキジやヤマドリといった狩猟鳥の放鳥です。

しかし現在では鳥をターゲットにする狩猟者が減少しており、この事業によって利益を受ける狩猟者がかなり偏ってきています。

ほとんど惰性で続いているものです。

そもそも飼育した鳥を野外に放つ行為は、遺伝的なかく乱や飼育環境由来の感染症の拡散などの問題があり、狩猟鳥獣や環境への影響の視点でも全く望ましいものではありません

地域によってはコジュケイのような外来生物を放っている事業すらあります。

 

「2.狩猟事故・違反防止対策事業」は事故等に関するキャンペーン事業です。

聞こえは良いのですが違反をする側が違反を取り締まることはできません

対策の具体的な内容としては、クレー射撃の大会を開いたり、オレンジのベストや帽子を配っているのですが、これにも弊害が現れています。

実際の猟銃による事故は「獲物だと思った」という誤射によるものか、「人がいると思わなかった」という矢先の確認不足、銃に弾を込めたまま作業した際の暴発等がほとんどです。

安全確認をしなかったり、射撃する時以外で弾を装填しているのは、銃の取り扱いに対する悪い慣れが原因です。

ソース:狩猟事故統計

クレー射撃は「飛んでいく皿を瞬間的に撃つ」もので、「獲物かどうか、矢先が安全かどうかを慎重に見定める」態度とは真逆の訓練です。

オレンジのベストについても、「オレンジでないものは獲物である」というような思い込みから一般人への誤射を生んでおり、逆に「オレンジの帽子がヤマドリに見えた」という誤射すらあります。

銃による事故や安全性に関する問題についてはこちらをご覧ください。

狩猟事故を抑制するためには、警察等の第三者による現場での取り締まりを強化することによって「銃の扱いに緊張感が欠けている者を正し、事故の素因がある者を除去する」ことにしか効果は望めません。

キャンペーン事業は警察による取り締まりの強化を避けるための言い訳的な性質の事業であり、実際には解決を遅らせているかも知れません。

 

「3.狩猟共済事業」は共済事業で、狩猟事故を発生させた時の費用等を保障する保険のようなものです。

狩猟登録を受ける際は保険の加入が必要ですが、この共済で代用することができます。

ただし、猟友会加入にかかる会費等は保険に比べてかなり高額で、金銭的なメリットはあまりありません。

このように社会あるいは狩猟者個人として見ても、猟友会という組織の価値がかなり低下しているのは否定できない状況のようです。

⑤ 社会的なリスク(事故)

日本は狩猟、有害鳥獣捕獲のいずれにおいても多くの事故が発生しています。

発生率を計算すると米国よりも高い状況(リンク先④)で、その多くが猟友会員によるものです。

しかし意外なほど猟友会への批判は少なく、トップの責任を問われることもありません。

事故を起こした際に「短期間の捕獲の自粛」程度の反応で済むのも、実は独占状態であることの恩恵です。

事故が起こった際、一般的には「危険だ」という声に対して「ではシカやイノシシをどうするのか」というような意見が多く見られます

捕獲=猟友会という状態なら、「捕獲による事故」か「獣の被害」かという二択の議論になりがちです。

猟友会が捕獲を独占している状態での事故は「猟友会の危険性」ではなく、このような「捕獲そのものに付随するリスク」のような捉え方になりやすく、捕獲方法や組織の体質等の議論を避けやすいのです。

比較対象となる別の団体がいたらどうでしょうか。

当然、「猟友会は危ないから別の団体に任せろ」という意見が出るはずです。

「その他の団体に頼む」という選択肢が一般の人に浮かばないのは、捕獲が独占状態にあるからで、このように批判を避ける意味でも猟友会は独占状態を維持しようとするのです。

例えば、わずかに存在する猟友会以外の(猟友会を前身としない)捕獲団体では、第三者に損害を与えるような捕獲関連の事故はほぼ発生しません。

これは当たり前で、普通の民間団体であれば事故を一度でも起こした段階で組織の存続が危うくなるからです。

こういった捕獲を担いうる猟友会以外の民間団体は、猟友会から様々な方法で強い圧力を受けます。

それはもちろん、猟友会の組織存続から見て最も危険な存在であるからでしょう。

⑥ 社会的なリスク(制度の歪み)

こういった組織構造が制度上でも様々な弊害を生んでいます。

大日本猟友会や都道府県猟友会は何とか捕獲の独占状態を維持させようと、国や都道府県の施策に圧力を加えているのです。

特に社会的な要求が大きく、そのため猟友会が組織存続の頼みとしているのは「有害鳥獣捕獲」です。

有害鳥獣捕獲はボランティアであると言われることがありますが、実態はそうではありません。

ほとんどの地域で捕獲に対して「報奨金」が支払われています。

一つの市町村で数百~数千万円の支出となっており、都道府県、国、と合算していけば膨大な額になります。

巨額の予算ですので、この分野は他の団体や企業に狙われる可能性があります。

もし有害鳥獣捕獲に参入する団体が猟友会の他にもあれば、猟友会入会のメリットが無くなって会員が流出し、比較競争の結果として組織が瓦解する恐れがあります。

このため、捕獲に関する報奨金の利権を守ろうと躍起になっているようです。

つまり「猟友会員でなければ捕獲ができないようにせよ」そして「猟友会員でなければ報奨金を受けられないようにせよ」という圧力を様々な所でかけています。

その結果、本来自衛のための枠組みであった有害鳥獣捕獲なのに、被害者が自分の田畑に出てくる加害獣を捕獲できない、というような状況も生じています。

市町村の条例の中で「有害鳥獣捕獲に従事するものは猟友会員であること」と明記されている場合すらあります。

捕獲従事者を特定の民間団体に限定した上で報奨金を設定することは強烈な利益誘導となるのですが、この問題はまだ激しくは指摘されていません。

こういった部分で批判が出ないのも、長く続いた独占状態の効果でしょう。

独占は「狩猟(ナワバリ)」「有害鳥獣捕獲」「個体数調整捕獲」「指定管理鳥獣捕獲等事業」など、あらゆる捕獲の枠組みに及びます。

これら捕獲の枠組みは本来、目的に応じて効率的に捕獲を運用するために作られているのですが、捕獲と名の付くものが一つでも猟友会以外の手に渡れば比較対象ができてしまうため、猟友会はどの捕獲もコントロール化に置こうとします。

その結果、同じ人が同じ方法で別の事業を掛け持ちする形になってしまうため、全く使い分けができずに全体の捕獲の質と量が変わらないという非効率な状況にもなってしまっています。

その他の利権の例として「実包(火薬を含んだ弾)の無許可譲受証」の存在があります。

通常、銃の弾を購入する場合は警察へ申請書を提出し、購入や消費等に関する詳細な計画を求められ、更新や変更のたびに手数料等を支払って火薬類譲受許可証を受ける必要があります。

ところが猟友会に所属していると、年間300発まで無許可で弾を購入できる「無許可譲受証」をもらうことができます。

この無許可譲受証は猟友会の他に警察署でも出すことができるのですが、多くの警察ではこの対応をやりません。

一方ではお金を支払って並んでいるのに、特定の民間団体のみに優先フリーパスが配られているような状況です。

これは猟友会というよりはシステムの問題ですが、猟友会入会を間接的に警察が誘導するという状況が生まれてしまっています

警察も立場と状況を分かっていない場合が多く、猟銃の所持許可の際に「猟友会に入れ」と直接的に言ってくる場合すらあります。

繰り返しますが、猟友会とは民間団体であり、特定の民間団体を行政や警察が支援すること、そこへ利益を誘導することは大きな問題です。

こういった「捕獲の独占」と様々な介入、競争と比較の不在によって起こる高い事故率や制度の歪みが、最も根本的な問題かも知れません。

⑦ 社会的な要求との不適合

狩猟者は基本的に、獲物が多ければ多いほど良いと考えます。

一方で行政が実施しようとする捕獲は、多かれ少なかれ獲物の数を減らそうという意図を持ったものです。

この大きなねじれが、被害対策としての捕獲を非効率にしています。

市町村の担当者から多く聞かれる例が、捕獲者の制限です。

例えば、猟友会以外の団体などの捕獲を許可して捕獲者の総数を増やし捕獲数を伸ばしたいと行政職員が提案する場合、「信用していないのか?ならもう我々は捕獲に協力しない」と凄むというような内容です。

獲物や報奨金の取り分が減ってしまうかも知れないので、ハンターはハンターが増えることを望みません。

人付き合いの密な市町村レベルでは、そのような子供じみた要求も通ってしまいます。

捕獲がそれまで独占状態であるなら、なおさらです。

あるいは、繁殖上重要なメスを捕獲しないようにする、報奨金の高い対象種は猟期に捕獲を控えて有害鳥獣捕獲で獲る、ということも可能です。

鳥獣被害対策の協議会等の場において「捕獲しなきゃ防除柵をしたって無駄だ」と被害対策全体の予算を報奨金へと誘導することも可能です。

残念ながら捕獲のコントロールに関して行政の内部にはほとんど専門家がいませんので、こういった狩猟者の要望や思惑の多くが通ってしまっています。

「被害を抑える」「生態系のバランスを整える」という社会的な目的に対する施策や予算を議論する場合、本来こういった趣味の狩猟者団体の意見や利害には十分に注意しなければならないものなのです。

ましてや独占状態で捕獲を任せるのは、社会的に見ても非常に大きな負の影響があります。

猟友会にとっても、構成員の減少と高齢化が止まらない状況で独占に頼った戦略を続けることは、長い目で見た組織の利益とはならないでしょう。

自浄作用が無く外部の目も機能しにくい状態は、破滅的な形での組織の崩壊を招きやすいものです。

猟友会を構成する各個人に目を向けると、危ない人も多くいますが、中には立派な人格者も当然存在しています。

それを思うと非常に残念なのですが、今後は独占状態の破綻から内部での対立や分裂が激しくなり、名実ともにバラバラの組織へと変化していくのではないでしょうか。

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この内容は「狩猟」「有害鳥獣捕獲」の調査結果と合わせてご覧頂くことをおすすめします。

 

“猟友会という組織” への4件の返信

  1. 記事を読ませていただきました。
    Balancerさんは猟友会の外の団体として活動しているとの記述がありましたが、どのようにして人員の招集を行っているのでしょうか?

    1. すみません、気付くのが遅れました。
      現在は特に招集を行ってはいません。
      同じ発想を持っていればbalancerという発想です。
      が、そろそろ真面目に団体を作らなきゃ世の中変わらないかもなと思い始めています。

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