猟友会という組織

鳥類や哺乳類の捕獲の際に「猟友会」という組織の名前がよく出てきます。

この組織の実態や抱える問題について調査した内容をご紹介します。

① 猟友会の成り立ちと組織

猟友会はもともと、毛皮や肉を安定的に供給するために国の主導で1929年に創設され、戦後も同じ目的で組織が継続されました。

猟友会は現在一般社団法人なのですが、創設時の名残で市町村の行政職員が事務等の部分を肩代わりしているという問題を持つ地域も存在します。

組織の構造としては、大日本猟友会の下に都道府県猟友会、その下に市町村支部が存在するツリー状の構造になっています。

各支部の長は構成員の選挙によって選ばれ、大日本猟友会の長は都道府県猟友会長の選挙によって選ばれます。

現在の大日本猟友会会長は元衆議院議員の佐々木洋平氏です。

大日本猟友会及び都道府県猟友会は一般社団法人の形態をとっていますが、その下の市町村支部は法人格を持っていない(形上は都道府県猟友会の一部になる)場合が多くあります。

一般社団法人は非営利なのですが、公益的(公益法人)ではありません。

非営利とは、株式会社のような「利益が出た場合に内部に還元する」ということをしないという意味です。

それ以外の部分では、一般社団法人は普通の会社と同じです。

② 思惑と行動原理

現在、猟友会は趣味で狩猟を行うハンターが集まった組織となっています。

大型哺乳類に関する歴史(リンク先②)でも書きましたが、狩猟によって得た肉や毛皮の販売によって生計を立てている人は現代ではほぼいません

魚で言えば、漁師が消えて釣り人が残ったような状況です。

ハンターは、思惑や行動原理が釣り人とよく似ています。

猟友会が組織として共有している意識は「獲物がたくさん獲りたい」「楽しく獲りたい」というものです。

農林業等の被害があるため大きな声では言いませんが、ジビエの構造(リンク先④)でも書いたとおり、基本的にはシカやイノシシのような獲物は多いほうが良いというのがハンターの考え方です。

魚が多くいるほど釣り人が喜ぶのと同じです。

加えてハンターは、ハンターの数が増えることを望みません

ハンターが増えれば獲物が減り、自分が狩猟に入っている地域の獲物が獲り荒らされてしまうからです。

このためハンターが多数いた頃から、トラブルを避ける目的で「ナワバリ」と呼ばれる仕組みが形成されてきました。

「この地域は自分たちが入るから、よそ者は来るな。そのかわり自分たちもよそへは行かない。」という不文律ですが、これがいまだに残っており、様々な問題を起こしています。

ナワバリという言葉が示す通り、狩猟者の多くは非常に排他的で、捕獲者が増えるような仕組みの改善に抵抗します。

上下関係が厳しい支部も多く、50~60代の方が市町村猟友会に入った場合も、猟友会の内部はそれ以上の歳の人ばかりですので、下っ端の役回りをさせられて実質的な捕獲ができないというような地域も多いようです。

③ 組織運営上のリスク

猟友会は構成員の減少と高齢化が急速に進んでいます。

しかし市町村支部レベルでは「新人やよそ者が入ってきてイザコザが起こるより、今のままが良い」という意見が多勢を占めているようです。

自分たちが引退するまで身内で楽しくやっていたい、ということです。

古くから各支部の間にはナワバリ争いが存在しており、隣り合った市町村支部同士は基本的に仲が悪いため、連携や共同での対策もほとんど打てません。

大日本猟友会や都道府県猟友会は市町村支部の会費によって運営しているので、構成員の減少は致命的なのですが、市町村支部レベルでは他人事なのです。

この大日本や都道府県の猟友会に対する会費の支払いに腹を立てた市町村支部が猟友会を離脱する事例も多く聞かれるため、大日本や都道府県猟友会からはあまり強い指示は出せません。

実際、猟友会を離れても狩猟や有害鳥獣捕獲のような捕獲には参加することができ、猟友会の外の団体も増えてきています。

我々Balancerもその一つです。

そもそも大日本猟友会や都道府県猟友会は市町村支部の選挙で選ばれた人で構成されていますから、内部に不満がたまれば次期に選ばれることはありません。

現在は猟友会を維持存続しようと様々な名目で多くの公的資金や制度が使われていますが(一民間団体ですから当然それはそれで問題です)、このように組織内の自浄作用が全く存在しないため、ほとんど効果がありません。

加えて、構成員が捕獲に関連した事故や報奨金の詐取などの事件を起こした場合でもトップの責任が問われることがほとんどありません

これは普通の組織から見ればかなり異常なのですが、後述する「独占」の結果このような状態になってしまっています。

④ 組織内の事業に関する問題

大日本猟友会は以下の三つの事業活動を行っています。

1.野生鳥獣の保護増殖事業
2.狩猟事故・違反防止対策事業
3.狩猟共済事業

柱であるこれらの事業にも、問題があります。

 

「1.野生動物の保護増殖事業」は主にキジやヤマドリといった狩猟鳥の放鳥です。

しかし現在では鳥をターゲットにする狩猟者が減少しており、この事業によって利益を受ける狩猟者がかなり偏ってきています。

ほとんど惰性で続いているものです。

そもそも飼育した鳥を野外に放つ行為は、遺伝的なかく乱や飼育環境由来の感染症の拡散などの問題があり、狩猟鳥獣や環境への影響の視点でも全く望ましいものではありません

地域によってはコジュケイのような外来生物を放っている事業すらあります。

 

「2.狩猟事故・違反防止対策事業」は事故等に関するキャンペーン事業です。

聞こえは良いのですが違反をする側が違反を取り締まることはできません

対策の具体的な内容としては、クレー射撃の大会を開いたり、オレンジのベストや帽子を配っているのですが、これにも弊害が現れています。

実際の猟銃による事故は「獲物だと思った」という誤射によるものか、「人がいると思わなかった」という矢先の確認不足、銃に弾を込めたまま作業した際の暴発等がほとんどです。

安全確認をしなかったり、射撃する時以外で弾を装填しているのは、銃の取り扱いに対する悪い慣れが原因です。

ソース:狩猟事故統計

クレー射撃は「飛んでいく皿を瞬間的に撃つ」もので、「獲物かどうか、矢先が安全かどうかを慎重に見定める」態度とは真逆の訓練です。

オレンジのベストについても、「オレンジでないものは獲物である」というような思い込みから一般人への誤射を生んでおり、逆に「オレンジの帽子がヤマドリに見えた」という誤射すらあります。

銃による事故や安全性に関する問題についてはこちらをご覧ください。

狩猟事故を抑制するためには、警察等の第三者による現場での取り締まりを強化することによって「銃の扱いに緊張感が欠けている者を正し、事故の素因がある者を除去する」ことにしか効果は望めません。

キャンペーン事業は警察による取り締まりの強化を避けるための言い訳的な性質の事業であり、実際には解決を遅らせているかも知れません。

 

「3.狩猟共済事業」は共済事業で、狩猟事故を発生させた時の費用等を保障する保険のようなものです。

狩猟登録を受ける際は保険の加入が必要ですが、この共済で代用することができます。

ただし、猟友会加入にかかる会費等は保険に比べてかなり高額で、金銭的なメリットはあまりありません。

このように社会あるいは狩猟者個人として見ても、猟友会という組織の価値がかなり低下しているのは否定できない状況のようです。

⑤ 社会的なリスク(事故)

日本は狩猟、有害鳥獣捕獲のいずれにおいても多くの事故が発生しています。

発生率を計算すると米国よりも高い状況(リンク先④)で、その多くが猟友会員によるものです。

しかし意外なほど猟友会への批判は少なく、トップの責任を問われることもありません。

事故を起こした際に「短期間の捕獲の自粛」程度の反応で済むのも、実は独占状態であることの恩恵です。

事故が起こった際、一般的には「危険だ」という声に対して「ではシカやイノシシをどうするのか」というような意見が多く見られます

捕獲=猟友会という状態なら、「捕獲による事故」か「獣の被害」かという二択の議論になりがちです。

猟友会が捕獲を独占している状態での事故は「猟友会の危険性」ではなく、このような「捕獲そのものに付随するリスク」のような捉え方になりやすく、捕獲方法や組織の体質等の議論を避けやすいのです。

比較対象となる別の団体がいたらどうでしょうか。

当然、「猟友会は危ないから別の団体に任せろ」という意見が出るはずです。

「その他の団体に頼む」という選択肢が一般の人に浮かばないのは、捕獲が独占状態にあるからで、このように批判を避ける意味でも猟友会は独占状態を維持しようとするのです。

例えば、わずかに存在する猟友会以外の(猟友会を前身としない)捕獲団体では、第三者に損害を与えるような捕獲関連の事故はほぼ発生しません。

これは当たり前で、普通の民間団体であれば事故を一度でも起こした段階で組織の存続が危うくなるからです。

こういった捕獲を担いうる猟友会以外の民間団体は、猟友会から様々な方法で強い圧力を受けます。

それはもちろん、猟友会の組織存続から見て最も危険な存在であるからでしょう。

⑥ 社会的なリスク(制度の歪み)

こういった組織構造が制度上でも様々な弊害を生んでいます。

大日本猟友会や都道府県猟友会は何とか捕獲の独占状態を維持させようと、国や都道府県の施策に圧力を加えているのです。

特に社会的な要求が大きく、そのため猟友会が組織存続の頼みとしているのは「有害鳥獣捕獲」です。

有害鳥獣捕獲はボランティアであると言われることがありますが、実態はそうではありません。

ほとんどの地域で捕獲に対して「報奨金」が支払われています。

一つの市町村で数百~数千万円の支出となっており、都道府県、国、と合算していけば膨大な額になります。

巨額の予算ですので、この分野は他の団体や企業に狙われる可能性があります。

もし有害鳥獣捕獲に参入する団体が猟友会の他にもあれば、猟友会入会のメリットが無くなって会員が流出し、比較競争の結果として組織が瓦解する恐れがあります。

このため、捕獲に関する報奨金の利権を守ろうと躍起になっているようです。

つまり「猟友会員でなければ捕獲ができないようにせよ」そして「猟友会員でなければ報奨金を受けられないようにせよ」という圧力を様々な所でかけています。

その結果、本来自衛のための枠組みであった有害鳥獣捕獲なのに、被害者が自分の田畑に出てくる加害獣を捕獲できない、というような状況も生じています。

市町村の条例の中で「有害鳥獣捕獲に従事するものは猟友会員であること」と明記されている場合すらあります。

捕獲従事者を特定の民間団体に限定した上で報奨金を設定することは強烈な利益誘導となるのですが、この問題はまだ激しくは指摘されていません。

こういった部分で批判が出ないのも、長く続いた独占状態の効果でしょう。

独占は「狩猟(ナワバリ)」「有害鳥獣捕獲」「個体数調整捕獲」「指定管理鳥獣捕獲等事業」など、あらゆる捕獲の枠組みに及びます。

これら捕獲の枠組みは本来、目的に応じて効率的に捕獲を運用するために作られているのですが、捕獲と名の付くものが一つでも猟友会以外の手に渡れば比較対象ができてしまうため、猟友会はどの捕獲もコントロール化に置こうとします。

その結果、同じ人が同じ方法で別の事業を掛け持ちする形になってしまうため、全く使い分けができずに全体の捕獲の質と量が変わらないという非効率な状況にもなってしまっています。

その他の利権の例として「実包(火薬を含んだ弾)の無許可譲受証」の存在があります。

通常、銃の弾を購入する場合は警察へ申請書を提出し、購入や消費等に関する詳細な計画を求められ、更新や変更のたびに手数料等を支払って火薬類譲受許可証を受ける必要があります。

ところが猟友会に所属していると、年間300発まで無許可で弾を購入できる「無許可譲受証」をもらうことができます。

この無許可譲受証は猟友会の他に警察署でも出すことができるのですが、多くの警察ではこの対応をやりません。

一方ではお金を支払って並んでいるのに、特定の民間団体のみに優先フリーパスが配られているような状況です。

これは猟友会というよりはシステムの問題ですが、猟友会入会を間接的に警察が誘導するという状況が生まれてしまっています

警察も立場と状況を分かっていない場合が多く、猟銃の所持許可の際に「猟友会に入れ」と直接的に言ってくる場合すらあります。

繰り返しますが、猟友会とは民間団体であり、特定の民間団体を行政や警察が支援すること、そこへ利益を誘導することは大きな問題です。

こういった「捕獲の独占」と様々な介入、競争と比較の不在によって起こる高い事故率や制度の歪みが、最も根本的な問題かも知れません。

⑦ 社会的な要求との不適合

狩猟者は基本的に、獲物が多ければ多いほど良いと考えます。

一方で行政が実施しようとする捕獲は、多かれ少なかれ獲物の数を減らそうという意図を持ったものです。

この大きなねじれが、被害対策としての捕獲を非効率にしています。

市町村の担当者から多く聞かれる例が、捕獲者の制限です。

例えば、猟友会以外の団体などの捕獲を許可して捕獲者の総数を増やし捕獲数を伸ばしたいと行政職員が提案する場合、「信用していないのか?ならもう我々は捕獲に協力しない」と凄むというような内容です。

獲物や報奨金の取り分が減ってしまうかも知れないので、ハンターはハンターが増えることを望みません。

人付き合いの密な市町村レベルでは、そのような子供じみた要求も通ってしまいます。

捕獲がそれまで独占状態であるなら、なおさらです。

あるいは、繁殖上重要なメスを捕獲しないようにする、報奨金の高い対象種は猟期に捕獲を控えて有害鳥獣捕獲で獲る、ということも可能です。

鳥獣被害対策の協議会等の場において「捕獲しなきゃ防除柵をしたって無駄だ」と被害対策全体の予算を報奨金へと誘導することも可能です。

残念ながら捕獲のコントロールに関して行政の内部にはほとんど専門家がいませんので、こういった狩猟者の要望や思惑の多くが通ってしまっています。

「被害を抑える」「生態系のバランスを整える」という社会的な目的に対する施策や予算を議論する場合、本来こういった趣味の狩猟者団体の意見や利害には十分に注意しなければならないものなのです。

ましてや独占状態で捕獲を任せるのは、社会的に見ても非常に大きな負の影響があります。

猟友会にとっても、構成員の減少と高齢化が止まらない状況で独占に頼った戦略を続けることは、長い目で見た組織の利益とはならないでしょう。

自浄作用が無く外部の目も機能しにくい状態は、破滅的な形での組織の崩壊を招きやすいものです。

猟友会を構成する各個人に目を向けると、危ない人も多くいますが、中には立派な人格者も当然存在しています。

それを思うと非常に残念なのですが、今後は独占状態の破綻から内部での対立や分裂が激しくなり、名実ともにバラバラの組織へと変化していくのではないでしょうか。

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この内容は「狩猟」「有害鳥獣捕獲」の調査結果と合わせてご覧頂くことをおすすめします。

 

有害鳥獣捕獲の仕組みと問題点について

鳥類や哺乳類のほとんどは「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」によって捕獲が禁止されています。

ソース:「鳥獣保護法

野生の鳥類や哺乳類の捕獲では、おおまかに分けて以下のような許可があります。

狩猟 狩猟免許と狩猟登録が必要な、個人の趣味としての捕獲。

都道府県が許可・管理する。

有害鳥獣捕獲 被害の抑制を目的として許可される捕獲。

ほとんどの地域で、市町村が許可・管理する。

個体数調整捕獲 個体数が増えすぎた種に対する緊急的な捕獲。

都道府県が計画を作成し、それに基づいて実施される。

学術研究捕獲 研究目的で許可される捕獲。

都道府県が審査し、許可・管理する。

今回は「有害鳥獣捕獲」に関する仕組みや問題点について調査した結果をご報告します。

① 有害鳥獣捕獲の仕組み

有害鳥獣捕獲は、農林漁業や生活環境に被害が発生した場合に、その被害を取り除くことを目的として実施されます。

有害鳥獣捕獲の許可事務は、ほとんどの地域で市町村が担当しています。

「被害を受けてから実施する」という運用ルールが本来はあるのですが、現在はシカやイノシシを含む中~大型哺乳類が増加しているため、被害の確認を待たずに有害鳥獣捕獲が許可される場合が多くなっています。

被害を受けて許可を申請した者が有害鳥獣捕獲を実施するのが通常なのですが、実際には陳情を受けた市町村が猟友会へ捕獲を委託して実施しています。

有害鳥獣捕獲は狩猟(趣味)とは全く別で、被害抑制のための捕獲であるため、本来は狩猟免許や狩猟登録とは無関係な捕獲の枠組みです。

しかし、捕獲者に狩猟免許と狩猟登録を要求する市町村が多くなっています。

狩猟免許は「趣味の捕獲の適切な制御」という目的で作られた資格で、求められるのは「狩猟を狩猟のルールで実施できる能力」です。

受けた方なら分かると思いますが、有害鳥獣捕獲の中心的な手法であるわな捕獲(わな猟)の狩猟免許試験では、捕獲を安全に実施する技術や被害管理のための技術などは問われません。

つまり有害鳥獣捕獲とは中身も無関係なのです。

役所から狩猟免許を要求されるのは「自分たちは毎年狩猟登録に金を払っているのに、有害鳥獣捕獲でイノシシ等をタダで獲れるのは不公平だ」という狩猟者団体の圧力による部分が大きいようです。

これも捕獲の独占(リンク先⑥)の一つの形です。

かなりスジ違いな主張なのですが、多くの地域でこれが通ってしまっています。

現在は都道府県ですら十分な数の専門家が存在しない状況ですので、市町村のレベルでは、被害抑制のための対策や捕獲の計画についての専門家が内部に存在しません。

このため、言われるがままの捕獲のコントロール体制になっているようです。

② 被害を抑制するための捕獲

被害抑制の観点では、ただ何でも捕獲すればよいというものではありません。

例えばイノシシの農業被害では、加害個体を捕獲しなければ被害は減りません。

山林の中には多数のイノシシが生息していますが、被害を出すのは特定のイノシシかその親子だからです。

あるいはシカの場合では、林業被害や生態系への悪影響も発生するため、長期的な視点にたち、特定個体の除去に加えてその地域における個体数の抑制も考えながら捕獲を実施する必要があります。

シカは1頭のオスが複数のメスと交尾するため、オスを捕獲しても生まれてくる子供の数に影響はほとんどありません。

このため、被害地のメスに集中的に捕獲圧をかける必要があります。

イノシシの場合は「捕獲の後に被害が減ったのか」、シカの場合はそれに加えて「メスが捕獲されたのか」を調べて捕獲の継続や修正を考えるべきなのですが、現在の有害鳥獣捕獲では、そのような配慮や評価は全くなされていません

捕獲した鳥獣の雌雄、成獣幼獣、捕獲地などの詳細が不明で、ただ頭数だけが記録されたものが多いのが現状です。

有害鳥獣捕獲は各市町村の「鳥獣被害防止計画」に基づいて実施される地域が多いのですが、これはほとんどの市町村がコピペで作っているひどい有様です。

(特定の市町村を攻撃したくはありませんので、お住いの市町村の「鳥獣被害防止計画」をご検索下さい。)

有害鳥獣捕獲の計画自体存在しない市町村もあります。

ほとんどの市町村で捕獲の根拠となる被害の把握自体がずさんで方法もバラバラであり、被害額計算の方法が未記載であったり根拠すらないものもあります。

これを作成する市町村の担当者は、被害管理の専門家ではありません。

多くの地域で、鳥獣による被害金額よりも有害鳥獣捕獲の報奨金のほうが大きくなっています。

意味のある計画ではなく、費用対効果も極めて低いということです。

こういった実質的に無計画な状況と情報不足が重なった結果、住民の「捕獲が足りないのだ」という意見が生まれ、報奨金の上乗せが議論される場合が多くあります。

しかしただ金額を増やしても、被害を抑制する捕獲が生まれるわけではありません。

考えるべきなのは、単純な捕獲数や一頭あたりの金額ではなく、捕獲の質と効率であり、被害を減らせる捕獲が計画されているのかどうかです。

③ 有害鳥獣捕獲の従事者

捕獲の質や効率への観点を持った捕獲者によって有害鳥獣捕獲が実施されるのかと言えば、そうではありません。

捕獲を実際にやっているのはほとんどが猟友会員であり、趣味の狩猟者です。

こちらに詳細があります。

「狩猟」活動は、現在まで途切れることなく脈々と続いてきています。

つまり狩猟とは「鳥獣を減らさずに恩恵を受け続ける」ことに優れた仕組みなのです。

有害鳥獣捕獲と趣味の狩猟は全く別の目的と運用方法を持つものです。

近年の大型哺乳類の増加は、現在の狩猟者や仕組みでは動物を減少させられないことを証明しているということを忘れてはいけません。

この点にも多くの誤解がありますが、「捕獲していれば数も被害も減るハズだ」というのは幻想です。

適切な方法と計画がなければ目的は達成できません。

実際、現在捕獲数は右肩上がりですが、個体数も右肩上がりの状態です。

ソース:環境省統計

狩猟の技術や原理は、有害鳥獣捕獲や個体数の抑制の視点から見れば十分なもの、適したものとは言えません。

狩猟者に、しかも全てを任せるというのは無思慮と言わざるを得ません。

技術だけでなく意識の問題もあります。

数十年前の有害鳥獣捕獲は本当にボランティアのような性質のものだったのですが、残念ながら現在は長く続いた報奨金制度によって捕獲の意味が変化しています。

それは「効率のよい小遣い稼ぎ」という意味です。

そこには、「獲物を減らさずに利益を受け続ける」という”狩猟の価値観”が変わらずに存在しています。

相手を減らさないように注意しながら報奨金をもらい続けようという発想が生まれ、膨大な予算の浪費になりうるということです。

この報奨金という仕組みは、その他にも様々な弊害を生んでいます。

④ 報奨金の詐取

弊害の最たるものが報奨金の詐取です。

報奨金の詐取について、既にいくつか報道がなされていますが、現状の仕組みでは詐取を止められません。

有害鳥獣捕獲では、管轄する市町村が捕獲の確認を行いますが、市町村間での連携は全くありません。

詐取の方法は、例えば簡単に思いつく範囲でも以下のような方法があります。

【写真で確認】
・捕獲した個体の角度を変えて写真を撮り、申請を繰り返す
【日付がしっかりと残る写真で確認】
・捕獲した個体を保存しておき、日付が変わってから写真を撮る
【耳などの現物を見て確認】
・狩猟や個体数調整の枠で捕獲した個体や交通事故個体で申請する
【捕獲現場で確認する】
・別の場所で捕獲された死体を山に持ち込んで、担当に確認させる

特に市町村の間で写真、耳、尻尾、捕獲個体のような確認物が移動してしまうと、単独の市町村では止めようがなく詐取の数も膨大になります。

報奨金の金額の高い市町村や確認がずさんな市町村が狙われやすくなります。

シカ、サル、イノシシについて1頭数万円の報奨金が得られる市町村もあり、それゆえに詐取が頻発します。

筆者も、確認物と金銭のやりとりについての具体的な提案がなされる場面を射撃場で見たことがあります。

報奨金総額が膨れ上がっているのは、詐取による部分も多分にあるでしょう。

報奨金の詐取は当然当事者が裁かれますが、それを可能にしている行政側の仕組みにも大きな問題があります

罠による捕獲があった場合は「獲物が生きた状態で捕獲を確認すること」「捕獲個体の処分が完了したことを現場で確認すること」が必要です。

そうすれば捕獲個体をコピーできなくなります。

銃による捕獲については、実施日に行政の担当者が同行すべきでしょう。

有害鳥獣捕獲は趣味の狩猟とは異なり「事業」の性質を持っています。

有害鳥獣捕獲を趣味の狩猟者に丸投げする状況そのものが異常であり、行政側にもそれなりの手続きと責任の負い方が必要です。

報奨金の仕組みや運用については、その弊害を抑えるために、都道府県や国レベルでの一定の基準を考えなければなりません。

本来は狩猟の制度と組み合わせて効率化することが最善でしょう。

管理に関する施策は、野生動物の生態についての専門家ではなく、野生動物の管理システムについての専門家を交えて議論の場が設けられるべきです。

市町村内の人員だけでは、十分な情報を持たずに感覚的な判断が選択され、各自の利害で施策が捻じ曲げられ、場合によっては逆効果となる仕組みを生んでしまいます。

⑤ 制度上の混乱

鳥獣を保護管理する仕組みにも混乱があります。

都道府県レベルでは「鳥獣保護管理事業計画」と「特定鳥獣保護管理計画」という計画があります。

この「鳥獣保護管理事業計画」と「特定鳥獣保護管理計画」は環境省が管轄する「鳥獣保護管理法」を根拠に作成されています。

ぜひご自身の地域の計画を検索してみてください。

これらの計画は、「希少種の保護」と「増加が著しい種の抑制」という双方向性の管理方針を担っています。

これらの計画にも多少問題があるのですが、根拠を基に外部の意見を聞きながら施策の方針を決定する仕組みが(ある程度は)整備されており、一定の評価ができます。

一方、市町村レベルでは「鳥獣被害防止計画」が策定できますが、担当者一人が一日で作っているような状況で、先述のとおり問題の発生源となっています。

「鳥獣被害防止計画」は農水省が管轄する「鳥獣被害防止特措法」を根拠に作成されます。

市町村は鳥獣被害防止計画を作ることによってかなりの額の補助金を受けられ、都道府県に指図されずに有害鳥獣捕獲を実施することができます。

そのため、質の伴わない間に合わせの計画を上げるのです。

行政は基本的に仕事を増やしたくないので専門的な調査や根拠の提示などの面倒を避けたがる傾向にあり、そのためにも特措法を使って捕獲しようとします。

つまり、特措法が被害管理の計画性を失わせています。

猟銃の技能講習の免除(リンク先②)もこの特措法が根拠です。

鳥獣被害防止計画は市町村が単独で作成するため、都道府県が作成する計画とはほとんどリンクしません

農水省と環境省の間にはいわゆる縦割りの溝があり、非常に関連性が薄い状態になってしまっています。

農水省は野生動物に関するデータも視野も感覚も乏しい部署ですから、対策の主軸を担わせるのには無理があります。

鳥獣被害の抑制に関する制度や施策について、少なくとも捕獲の部分については環境省にまとめたほうが良いでしょう。

環境省での予算運用が困難であれば、増員するか農水省から人員を派遣するくらいの対応があっても良いのではと思います。

それくらい、この二つの法が被害管理の全体像を混乱させています。

⑥ 対策の忘却

有害鳥獣捕獲は、ほとんどが猟友会によって実施されています。

そして、捕獲報奨金は行政側が負担しています。

つまり被害を受けた人は、捕獲を要請しても一銭も払いません

ここにも実は問題があります。

例えば農業では、被害に対して電気柵や周辺の刈り払いなどを実施しなければ、イノシシ等による被害はなかなか減りません。

実際「効果があった」という声が一番聞かれるのは、捕獲ではなく適切に設置・管理された防除柵です。

しかし、そういった農家自身にコストと労力がかかる対策に比べ、有害鳥獣捕獲は市町村への電話のみで実施することができます。

被害を受ける者からすれば非常に簡単で懐の痛まない対策であるため、柵などの自主的な対策を置き去りにして捕獲が進んでしまう事例が非常に多いのです。

農山村では農業に関わる地域住民は大きな票田(支持母体)ですから、行政の上層部も盲目的に予算をつける傾向があります。

この流れは被害対策が失敗する事例のほとんどで見られます。

どのような地域でも、被害に真っ先に気づき、その地域に合わせた対策を考えて実施できるのは住民だけです。

住民が被害対策を他人事と感じ始めてしまえば、行政側がどのような施策を打っても十分な効果は得られません。

病虫害による被害と同様に、被害を受けた者が自分で対応するという基本に立ち返ならければならないのです。

つまり、被害を受けた者が許可を受けて加害鳥獣を捕獲する、という当初の仕組みを通常どおりに運用できるような制度設計に戻すということです。

被害受けた者が有害鳥獣捕獲をスムーズに自分で実施でき、危険な止め刺しの部分等を猟銃の所持者や熟練者に委託できるような制度設計に持っていくのが理想的な形かも知れません。

そしてその仕組みをより効果的な形にするためには、狩猟制度を含めた捕獲制度の全体像を見渡した議論が必要です。

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この内容は「狩猟」「猟友会」の調査結果と合わせてご覧頂くことをおすすめします。

 

狩猟の仕組みと問題について

鳥類や哺乳類のほとんどは「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」によって捕獲が禁止されています。

ソース:「鳥獣保護法

野生の鳥類や哺乳類の捕獲では、おおまかに分けて以下のような許可があります。

狩猟 狩猟免許と狩猟登録が必要な、個人の趣味的な捕獲。

都道府県が許可・管理する。

有害鳥獣捕獲 被害の抑制を目的として許可される捕獲。

ほとんどの地域で、市町村が許可・管理する。

個体数調整捕獲 個体数が増えすぎた種に対する緊急的な捕獲。

都道府県が計画を作成し、それに基づいて実施される。

学術研究捕獲 研究目的で許可される捕獲。

都道府県が審査し、許可・管理する。

今回は「狩猟」に関する仕組みや問題点について調査した結果をご報告します。

① 狩猟の意義

狩猟は、ハンターが野生動物を捕獲する趣味のことです。

現在は「狩猟免許」という試験があり、それに合格した者が各都道府県で「狩猟登録」を行って狩猟をしています。

狩猟には「猟法」「狩猟鳥獣」「狩猟期間」等の定めがあり、これらを守らなければなりません。

近年は動物の殺生自体が禁忌のように扱われていますが、人間社会の維持のために狩猟は多くの利点を持っています。

近年は増えすぎた動物を捕獲することによる自然環境のコントロールが第一に取り上げられています。

もちろん、それ以外にも利点があります。

一つは、野生動物の生息状況や増減傾向のモニターです。

野生動物は山林内に隠れて生息しているため、まともに調査を行おうとすれば莫大な予算と人員が必要です。

人間では700億円をかけ80万人を動員する国勢調査がありますが、野生動物にはそんな調査はありません。

現在は、ハンターが報告する狩猟データを収集し分析しなければ鳥獣の動向が把握できないほど、狩猟者の”調査者”としての機能が重要になっています。

狩猟鳥獣以外の種についてもアンケートの形でデータを収集しはじめている地域もあります。

狩猟者は狩猟登録の際にお金を支払っていますので、「金を払ってでも調査してくれる」非常に低コストな調査員なのです。

もう一つは、環境への影響が少ない肉の供給です。

意外に思えるかも知れませんが、畜産のような飼育行為は餌や飼育環境の調達によって、狩猟で動物を狩る場合よりも大きな負荷を環境にかけています。

肉を生産するためには肉の重さの数倍~数十倍の餌とそれをまかなう土地、廃棄物の処理、衛生管理のための物資などが必要です。

これは養殖魚の分野でよく話題に上がりますが、畜産でも当てはまる視点です。

ソース:養殖業の限界

狩猟は十分にコントロールされた状態であれば、社会的に見ても大きな価値があるのです。

② 狩猟制度の課題(対象種)

狩猟の課題はそのコントロールにあります。

まず、選定されている狩猟鳥獣を見てみましょう。

狩猟鳥獣とは、狩猟によって捕獲しても良い種のことです。

こちらのページにまとめてあります。

現在の狩猟鳥獣には、IUCNや環境省のレッドリストで準絶滅危惧以上に相当する種が含まれています

これらの狩猟鳥獣より絶滅リスクの低い生物は国内にたくさん生息しているのに、なぜこのような状況になっているのでしょうか。

理由は恐らく、狩猟鳥獣の変更にかかる手間と時間、環境省のパワーです。

狩猟鳥獣を変更する場合、中央環境審議会に通して大枠が決まりますが、実際にはそれ以前に環境省の内部で利害関係者との調整が行われているはずです。

現在狩猟鳥獣は48種が選定されていますが、狩猟者団体は1種外す場合は同価値の他の1種を入れろと要求する場合が多いようです。

ところが現在狩猟鳥獣に選定されている種以外では、生息数や生息動向についてまともな調査がほとんど行われていません。

狩猟の対象ではないため、狩猟者によるデータも存在しません。

環境省は1500人程度の小規模な組織で、許可関係の事務が多く事業の予算もほとんどないため、十分な調査が計画できていません。

その中で公害、廃棄物、放射能、温室効果ガス、自然公園など、他の事務も大きなウェイトを占めており、野生動物や狩猟の事業に手が回らなくなっています。

ソース:環境省予算

そんな状況であるため、今度は逆に野鳥の愛好団体等が「そんなデータもない状況でその種を狩猟鳥獣に入れるのか」との意見を出してきます。

結局「現状維持でいくしかない」ということになります。

こういった狩猟鳥獣候補のリスト等の事項は、事前に環境省内で議論されるものであるため、会議時間の限られた中央環境審議会の議題とはなりません。

狩猟鳥獣を”効果的・適応的に”選定する仕組みの再構築が必要なのです。

加えて狩猟鳥獣のリストには、識別が難しい狩猟鳥獣が含まれています

特に散弾銃を用いた狩猟では、バードウォッチングのように双眼鏡等で相手を識別することをしません。

野鳥観察の場面ですら類似種との識別が難しい狩猟鳥も多くいます。

ほとんどの場合において「狩猟鳥獣だろう」との推測で狩猟されています。

後述しますが、狩猟鳥獣をしっかり判別できる警察官はほとんどいませんので、「狩猟鳥獣以外の種の捕獲」については取り締まりもほぼ皆無です。

狩猟の免許を細分化し、瞬時の判断が要求される銃を用いた鳥類の狩猟については狩猟免許をより厳格にすべきで、更新時に試験を課すような改善が必要でしょう。

自然環境関連の犯罪や違反を専門とした警察官の配備も検討すべきです。

③ 狩猟制度の課題(個体数の抑制)

狩猟には、増えすぎた動物を抑制する効果が何よりも期待されています。

その観点から狩猟制度を見てみましょう。

狩猟には「猟期」と呼ばれる狩猟が可能な期間が定められています。

ところがこの猟期は、現行法上で可能な限り長く設定しても10月から翌4月までの半年間程度で、残りの半年間は狩猟ができません。

増えすぎた動物の抑制の観点では、効果を半減させている状態です

さらに、狩猟をする場合、狩猟免許の取得に加えて狩猟登録という手続きを毎年踏まなければなりません。

これは罠であれば年10,000円、銃であれば年18,000円程度の負担となり、新規の狩猟者を獲得する際の大きなハードルとなっています。

全国で見れば、鳥獣による被害は農業被害だけで190億円であり、捕獲報奨金へはこれより膨大な額が支出されていると思いますが、狩猟登録料等による総収入は19億円程度しかありません。

もはや意味のある金額ではありません。

狩猟者を獲得し、捕獲圧を高めたいのであれば、シカ、イノシシ、外来生物等の数を抑制すべき対象種に限っては、狩猟登録や猟期の制限を外すべきでしょう

つまり、全国的に増加して問題を生じている種や外来生物に関しては狩猟免許のみで通年狩猟できるようにする、ということです。

なぜそうならないのでしょうか。

実は、猟期の期間外に存在する「有害鳥獣捕獲」という捕獲の仕組みが作用しています。

もし通年猟期が設定されてしまえば、有害鳥獣捕獲の際の報奨金が得られなくなってしまいます。

この利権を守るために狩猟者団体等が抵抗するのです。

現在の制度では、有害鳥獣捕獲に参加していれば狩猟登録費用の負担も免除される仕組みとなっており、狩猟登録がハードルになっていれば新しい狩猟者(ライバル)も増えないので一石二鳥というわけです。

捕獲者の思惑についてはこちらをご覧ください。

しかし目的とする効果から見れば本末転倒な話です。

まずは狩猟制度全体を見渡し、科学的なデータに基づいた狩猟鳥獣や猟法の選定ができるようデザインを考え、そのデザインの具体化のために予算をつけることが必要でしょう。

こういった利害関係を明確にし、それに振り回されない環境で狩猟制度を議論しなければなりません。

④ 狩猟制度の課題(事故)

次に、狩猟に関連する事故を見てみましょう。

以下の表は、日本と米国の狩猟関係の事故を比較したものです。

日本 アメリカ
狩猟による年間の死者数 約6人 約100人
狩猟人口 16万人 1370万人
狩猟人口/国土面積(平方キロ) 0.423 1.393
死者数/狩猟人口×10000 0.375 0.073

ソース:米国IHEA資料
ソース:人口動態統計

米国は圧倒的に狩猟者人口が多く、実は狭い島国である日本より米国のほうが3倍以上も狩猟者の密度が高い状態です。

しかし、狩猟人口あたりで換算すると日本は米国の5倍の事故発生率となっています。

狩猟環境やその他の背景があるにせよ、狩猟者が過密で狩猟が盛んな銃大国の米国よりも、日本の人数あたりの事故発生率は高いのです。

主な理由は恐らく、密室化した狩猟環境です。

狩猟歴の長い狩猟者に多いのが、「ガサドン」と呼ばれる獲物の確認をしない発砲や、弾を装填したままの銃の持ち運びです。

見つけた獲物を逃さないために、弾を入れたまま銃を持ち運び、ガサガサと音がしただけで撃ってしまう、という恐ろしい狩猟者が存在します。

日本は、銃の所持許可については世界でも指折りの厳しさだと言われます。

しかし、現在猟銃を持っている高齢の世代の多くは所持許可の要件が厳しくなる前に銃を所持しています。

銃所持の課題についてはこちらをご覧ください。

そして、山林に入って行われる警察の取り締まりは現在ほぼ皆無です。

実は、鳥獣保護法の中で都道府県職員が「特別司法警察職員」という立場で警察に準ずるような逮捕等の権限を有する仕組みが存在しています。

しかしこれは完全に形骸化しています。

以下は、警察及び特別司法警察職員の動員数と検挙件数(H24~26のべ数:全国)です。

警察 特別司法警察職員
動員数 12,250 3049
検挙件数 726 9
警察を1とした時の
特別司法警察職員の検挙効率
1 0.05

ソース:鳥獣関連統計

都道府県職員は膨大な通常業務を抱えており、山林内へ監視に入る場面そのものがほとんどありません。

山林内へ監視を届かせようという制度が全く機能しておらず、取り締まりの効率も非常に悪いのです。

この他に、狩猟の取り締まりを補佐する役割を持つ「鳥獣保護管理員(旧鳥獣保護員)」という制度もあるのですが、こちらも形骸化しています。

鳥獣保護管理員は採用に際して関連法などの専門的な知識が問われる場面がほとんどなく、本来取り締まられる側であるはずの狩猟者団体の構成員が採用されることも多くあります。

鳥獣保護管理員は、人数は多くても稼働日数が少ない、都道府県職員も素人であるため適切な仕事が指示されないなどの問題も抱えており、実効的な機能をほとんど有していません。

つまり捕獲したものが狩猟鳥獣か、猟法やその他の法令を遵守しているか等を、フィールドでは誰も監視していません

頼みの綱の警察官ですら、猟法や屋外の猟銃の取り扱いについて何が違反となるのか、しっかり把握していない人もかなり多くいます。

道路法面にかけられた標札の無い1~2㎜針金の胴くくり罠。警察へ通報して来てもらったが、その警察官に「これの何が違法か」と聞かれてしまった。

こういった取り締まりの空白によって狩猟環境の密室化が進み、”狩猟者の身内ルール”が蔓延した結果、通常の感覚では到底理解できない違法行為が常態化しているのです。

猟銃が犯罪に使われた例ではそれ以前に他のトラブルを起こしている場合が非常に多いため、事件を起こす素因を持つ人を早期に見つける意味でも屋外での取り締まりは重要です。

狩猟やその他の捕獲が行われる山林内まで影響が及ぶような取り締まり体制が早急に必要なのです。

銃で狩猟を行う場合は狩猟免許や狩猟登録に加えて「銃の所持許可」を受ける必要があり、この制度についても多くの問題があるのですが、それはこちらで別にまとめています。

⑤ 猟銃の運用等について

猟銃の存在自体が危険で不要かといえば、そうではありません。

どのような道具でもそうですが、重要なのは安全で効果的な運用と、それを担保する仕組みです。

例えば、わなにかかったイノシシ等の逆襲による人身事故が多く報告されるようになっています。

ソース:狩猟事故統計

大型のイノシシなど、わなにかかり興奮状態になった鳥獣のとどめを刺す場合に最も安全なのは、適切な距離が取れる猟銃による”止め刺し”です。

近年は仕事をリタイヤした60代が親から引き継いで農業を営み、鳥獣被害に困ってわな猟を始めるケースが多く見られます。

特に高齢の狩猟者のわなで不意に大型のシカやイノシシがかかったり、クマ類が混獲された場合、猟銃を持った捕獲者が必要になります

銃が無ければ、俊敏で攻撃的になった大型獣にナイフやロープのみで高齢者が対応することになります。

近年は、市街地等に迷い込んだり人に慣れて危険な行動を示す大型獣が多く報告されるようになってきています。

猟銃という選択肢の存在がさらに重要になってきているのです。

猟銃については野外で十分に取り締まりが可能となるような体制整備が必要であり、安全な運用方法へ誘導する施策が打たれていくべきでしょう。

狩猟における銃の使用については、弾頭に鉛が使われていることも問題となっています。

半矢(弾は当たったが逃げた個体)の個体が野外で死んでしまった場合、傷口には細かく砕けた鉛が付着しています。

それを肉と一緒に猛禽類が食べてしまうと鉛中毒が発生します。

カモを狙った銃による捕獲においても広く鉛の散弾が使われています。

カモの仲間では、巻き貝等と一緒に鉛の弾を飲み込んで鉛中毒を起こす場合があります。

北海道は現在、鉛を含んだ弾頭を狩猟で用いることが禁止されていますが、この鉛中毒の発生が一つの理由です。

本州、四国、九州にも、保護が必要な猛禽類や狩猟鳥でないカモ類が当然生息しています。

狩猟後に人が食肉として利用する場合を考えても、鉛が含まれている可能性があることは大きな問題です。

鉛中毒も問題なのですが、そもそも汚染が問題視されている鉛を環境中に拡散し続けている状況だけ考えても、これは見直すべきでしょう。

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この内容は「猟友会」「有害鳥獣捕獲」の調査結果と合わせてご覧頂くことをおすすめします。