危機管理

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屋外で遭遇する事故リスク(日本国内)についてまとめています。

遠征する際、遠出する際、新しいことを始める際は、どんなリスクがあるのかを思い出しましょう。

下表は命にかかわるような重い項目を選んだものです。
(事故件数や死者数は年度によって変動があります。)

掲載項目以外にも様々なリスクがあることに注意してください。

もちろん、法の順守が前提です。

事故の種類 概要
交通事故 2019年の死者:3215人(38万1002件)

レンタカー利用時や知らない道の走行時は特に注意。道路の凍結、積雪、霧、未舗装道路、落石、見えない側溝、動物の飛び出しなどに注意。居眠りや焦りを生まぬよう、無理な旅程や計画を避けること。

とにかく、まずは、何よりもコレに注意。

水難 2018年の死者:692人(1356件)

転落、突然の病気、疲労等により溺水、低体温等で命を落とす。複数人で行動すること。遊泳の場合は、流れのある場所、波のある場所、足のつかない場所に近寄らないこと。釣りの場合はテトラポッドや落ちたら戻れない堤防などに注意。釣りでは携帯などを落とす際に慌てて体勢を崩す事が多いので、持ち物や道具の落下対策を。ライフジャケットを過信しないこと(外傷、出血、低体温等を解決しない)。

海の緊急は118。

遭難 2018年の死者:不明者含め342人(2661件)

滑落、転落、転倒、疲労、突然の病気、低体温等で動けなくなり命を落とす。近くの山に入る場合であっても準備を怠らず、複数人で行動すること。ルート・時間・天候等に注意してしっかり計画を立てること。少しでも不安が生じたら引き返すこと。GPSを用いる場合でも、機器の破損や電池切れを想定して地図を持つこと。目立つ服装や連絡手段、鈴、笛、ライトを準備しておくこと。

狩猟 2017年度の死者:自殺者含め13人(29件)

猟期(概ね11月~3月)に山林に入る際は特に注意が必要。笹薮や低木林で誤射が多く発生している。鈴の携行や明るい服装には、ある程度誤射を避ける効果があると思われる。なお、銃による事故とは別に、罠によって捕獲されたイノシシやクマによる襲撃が毎年生じている。罠の周辺には標札がかけてあるため、注意すること。

銃所持者は、単純に法を守ること。射撃対象を正確に視認していない状態での装填、射撃対象と矢先の安全を確認していない状態での発砲は常に違法である。

罠架設者に関しては、見晴らしが良く人の利用が少ない平坦な場所に架設すること。より戻し、締め付け防止金具、ワイヤー強度を確認し、標札の視認性に注意を払う事。

食中毒
(自然毒)
2018年の死者:3人(61件)

同定に確信がないものを食べないこと。人にあげないこと。山菜や魚を得ようとする過程で多くの遭難や水難事故が発生している。自然由来の食糧をあてにして献立をたてると無理や希望的観測が生じる。注意。

感染症 食中毒
(自然毒以外)
腸管出血性大腸菌、サルモネラ、ボツリヌス、E型肝炎、カンピロバクターなど

主に市販品や飲食店においてではあるが、食中毒(自然毒以外)によって毎年数名~10名程度死者が出ている。合わせた件数は年間約1300件程度。

野外採取の食材はよりリスクが高い可能性がある。淡水の水生生物、その他の陸生生物、市販品であってもブタ肉や鳥肉は生食をしないこと。夏場は食品を保存する温度に注意。海産魚を刺身で食べる場合は、釣った直後に内臓を除去しておくこと(アニサキス)。

糞、水経由 トキソプラズマは妊婦が感染した場合に重い症状となる可能性がある(先天性トキソプラズマ症)。先天性トキソプラズマ症は年間130~1300件程度発生していると考えられる。ネコの糞便や汚染された水などが感染源となる。ネコを放し飼いにしないこと。

エキノコックスは北海道で感染する可能性が高く(現在は愛知県もリスクあり)、年平均15名程度の感染が明らかになっている。イヌ科の哺乳類のフンの中に排出された虫卵を経口摂取して感染する。ペットの犬がエキノコックスに感染したネズミ等を食べた場合、犬のフンへも虫卵が排出されるため、拾い食いに注意が必要。

屋外の水は煮沸してから飲むこと。動物の糞や汚染された泥などに触らないこと。屋外での飲食は手を清潔にしてから。

ダニ経由 SFTSの他にも、日本紅斑熱、ダニ媒介性脳炎、ツツガムシ病など

SFTSの場合は2019年の感染101人で死者5人。その他のダニ媒介性感染症を合わせると毎年1000件弱の感染例がある。

近年は大型野生動物の分布拡大により草地があればどこにでもダニがいると考えておく。ディートやイカリジンを含む虫よけがダニの咬症予防に有効。ダニを発見したらガムテープで吸着し、逃げられないように張り合わせて捨てる。ツツガムシは噛まれても気付かない場合が多いため、体調が悪くなった場合は草地等に入ったことを医師に申告すること。

蚊経由 日本脳炎

発症者は年間数名だが、致死率は20%~40%。

1995~2006年生まれの人はワクチン未接種である可能性がある。ワクチン未接種の場合は接種する。特に外国の方をアウトドア目的で日本に招く場合は注意が必要。

傷由来 破傷風

年平均40名程度が感染し、致死率は約30%。

1968年以前生まれの人はワクチン未接種である可能性がある。未接種者は接種すること。10年程度で抗体価が低下するため、定期的に追加接種することが望ましい。泥の中で受けた傷、動物による咬症、錆びた金属等での傷は高リスクであり注意が必要。長靴や軍手等を使用すること。

危険生物 ハチ 毒そのものよりもアレルギー症状が危険で、毎年20~30人程度の死者が出ている。

スズメバチのみがアレルギーを起こすわけではない。多様なハチに注意。屋外での活動が多い人は抗体価の検査を受けること。巣に近づかないこと。刺激しないこと。山林内での活動時は複数人で行動すること。地中に巣がある種もいるため、山林に踏み入る場合は羽音に注意。ポイズンリムーバーは症状を軽減しうるが、アレルギーの根本解決にならない(使っても病院へ急行する必要がある)。過信しないこと。

マムシ 毎年10名弱程度の死者が出ている。

夜間に活動的。昼は地面付近の構造物に隠れていることが多い。山林内での活動時は複数人で行動すること。地面付近のものをひっくり返して生物を探す際は、棒などを使うこと。手をつく場所に注意。長靴を履くこと。ポイズンリムーバーを過信しないこと。

ハブ 数年に一度程度の頻度で死者が出ている。

沖縄及び奄美に生息。樹上でも活動することがある。山林内での活動時は複数人で行動すること。マムシより大型で危険エリアが広いため、見つけてもマムシと同じような接し方をしないよう注意。ポイズンリムーバーを過信しないこと。

クマ 年平均2名程度が事故で死亡している。

ヒグマ(北海道)とツキノワグマ(本州・四国)の2種。山林に入る際は複数人で行動し、鈴やラジオを持つこと。

予防が何よりも重要です。

その予防のためには、どのようなリスクがあるのかを意識しておかなければなりません。

時折思い出して、しっかりと対策しましょう。

 

なお病と不慮の事故を除けば、最も多くの人命を奪っているのは自殺です。

上記項目の死者数を全て足しても、自殺者数には及びません。

屋外で出会うリスクに注意することはもちろん大事ですが、まず屋外に出かけられるような環境と時間を死に物狂いで確保しましょう。